本当は怖い計算ドリル ~その9~ グショウ庭の宝物

いきなりですが、

たし算・ひき算・かけ算・わり算を1題ずつの合計4題に挑戦してみませんか?

よろしかったら、ご家族でタイムを計って競い合うのもおもしろいかも。

みなさん、紙と鉛筆の用意はいいですか?

さて、お子さん、お母さん、またはお父さん、
はたまたおばあちゃん、おじいちゃん!
いったい勝利の女神はだれに微笑むのか?

いざ、勝負!

の前にヒントです。

式を変形させれば簡単に答は出ますよ。

どのように式を変形させればいいか考えてみましょう!

と言われても、
考えれば、時間はかかり、
考えなければ、ひたすらややこしい計算をして、これまた時間はかかる。
う~ん、「考えるべきか、考えないべきか、それが問題だ」
(To think, or not to think : that is the question.)
とハムレットのように悩んでいる間に
時間は過ぎていきますよ。(笑)

気をつけてくださいね。

用意はいいですか?

それでは、始め!

<目標タイム> 20秒

① 268+199=

② 25×36=

③ 731-197=

④ 32÷0.5=

<解答>

① 467 ② 900 ③ 534 ④ 64

どうでしたか?

ご家族みんなで楽しんでいただけましたでしょうか?
やはり親子で競争すると、盛り上がりますよね。

目標タイム以内でできた人、とんでもなくすごいとしかいいようがないです。
瞬時にしくみが見えましたね。

それでは、式の変形の仕方の発表です。

① 268+199
=267+200
=467

② 25×36
=25×4×9
=100×9
=900

③ 731-197
=734-200
=534

④ 32÷0.5
=64÷1
=64

最初から、このように解かれた方。
(もちろん別の早業的解き方でもOKです!)
明日から、塾の実力講師として十分やっていけますよ。(^_^)v

なるほどと思われた方は、算数のセンス十分ありです。

計算によっては、なんでそうなるの?と思われた方も結構いらっしゃると思います。

驚くべきことに、小学生の中にも、このような流れで、
ささっと解いてしまう子もいるのです。
だけど、小学生は数学をまだ習っていませんので、
「数式」を変形させるのではなく、
「数式のイメージ」を変形させるということになります。

でも、「数式のイメージ」と言われてもピンときませんね。

「数式のイメージ」とは何なのか?
「数式のイメージ」を変形させるとは何なのか?

「数式のイメージ」は、これから「数式」に発展していく
「もとのイメージ」つまり「原形イメージ」と呼んでもいいものです。

その「原形イメージ」をいろいろといじくるだけで、
答が出やすくなるのです。

①~④の計算式を、文章題に変えて考えると、わかりやすくなります。

① 268+199=267+200=467

左の皿に268個のイチゴ、右の皿に199個のイチゴがあります。全部で何個のイチゴがあるでしょう。

全部のイチゴの数を求めればいいだけですから、
左の皿からイチゴを1個だけ、右の皿に移すだけで計算しやすくなります。そうすると、267(個)+200(個)という式に変身しますね。

② 25×36=25×4×9=100×9=900

25人の子どもに36個ずつアメを配る予定です。
全部で何個のアメを用意しなくてはいけませんか。

36個のアメを9つの袋に分けると、1つの袋に4個ずつのアメが入ることになります。それから、1人に9袋ずつ配ればいいわけです。
(なぜ4個ずつのアメにするかといえば、25の4倍が100と見えるからです)
まず1袋(4個)ずつ25人に配ると、100個のアメが必要です。
1袋ずつ25人に配ることを9回くり返せば、1人に9袋ずつ配ったということになり、それは100個ずつ配ることを9回くり返すことと同じ事です。それで、式は100×9となり、答は900(個)となります。

③ 731-197=734-200=534

731cmの長さのテープと197cmの長さのテープがあります。
2本のテープの長さの差を求めなさい。

それぞれのテープに同じ長さのテープをつぎ足して、同じ長さずつ長くしても、2本のテープの長さの差は変わりません。
そこで、197cmに3cmのテープをつぎ足すと200cmと、計算しやすい長さになります。当然、他方のテープにも、3cmのテープをつぎ足さなくてはいけません。
つまり、734(cm)-200(cm)で求めることができ、534(cm)となります。

④ 32÷0.5=64÷1=64

1日に、怪獣ブースカは32kgのエサを食べて、怪獣プースカは0.5kgのエサを食べました。ブースカはプースカの何倍のエサを食べたでしょう。

毎日、同じ量を食べさせても、2匹の食べる量の割合は変わりませんから、もう1日、この2匹の怪獣に、前日と同じ量のエサを食べさせます。すると、ブースカは64kg、プースカは1kgになります。64kgは1kgの64倍となりますね。

このように、高度に抽象化された式も
具体的な状況に置き換えることができれば、

式の操作が

「目に見える」

のです。

子どもが「あの先生の授業わかりやすい」というとき、
先生は難しい内容も身近な例にたとえて授業中にいろいろな話をしているはずです。
優秀な指導者はこのあたりの事情がよくわかっているので、
具体例を示すことが基本的事項の理解に欠かせないということを
知っているのです。
つまり、このことが学校での教師、塾での講師の当たりはずれにつながる要因の1つになります。

それでは、優秀な先生に当たれば、それだけで学力が伸びていくのか。

残念ながら、答はノーです。

もし、そうした具体的な状況を設定する図を描いて丁寧な説明をしたとしても、グショウ庭(前の記事参照)で遊んだことのない子はやはりピンときにくいのです。
確かに話としてはわかりやすいのだけど、肝腎な大切なポイントは「いまいち、う~ん、わかったような、わからないような」ことになりやすいです。

それもそのはず。

グショウ庭の宝物である「数式のイメージ」を拾っていないわけですから。

外側から、いくらいろいろな知識を伝授されたって、
内側に対応するものがなければ、
外と内はつながらないのです。
つまり、ピンとこないのです。

結局、どちらの先生に当たろうが、
グショウ庭でたくさん遊んだ子だけが
しっかり理解するということになります。

机の上でのお勉強の世界ではなく、ごくありふれた日常、
具体的な状況の中にこそ
いろいろな「数式のイメージ」が宝の山のごとく、
ちりばめられているのです。

グショウ庭を少しのぞいてみましょう。
「数式のイメージ」がたくさん転がっていますよ。

「さあ、このケーキ、家族分ちゃんと分けてね。けんかしないように、同じ大きさにね」
「こっちのチームの方が4人多いから、どちらのチームも同じ人数にするには・・・」
「けんちゃん、カーテンつけたいのだけど、その窓のサイズ、巻き尺で測って」
「ぼくの泥だんご3つもとっていったな。返せよ。あと1つで100個になるとこだったのに」
「へっへ、俺の山の方がお前のよりも、げんこ2つ分高いぜ!」
「あの穴の中にこのボール入れたら、3点だからね。さとし君は、
4回入れたから、得点は・・・」
「あと、7分でドラゴンボールが始まるぞ」

グショウ庭で毎日毎日たくさん遊ぶことができた子は、
その庭に落ちている膨大の数の「数式のイメージ」を拾うことができます。
そして、その「数式のイメージ」が無意識の中に取り入れられ、

そこには、

「たし算」の引き出し
「ひき算」の引き出し
「かけ算」の引き出し
「わり算」の引き出し

のような基礎的な引き出しが自動的に作成され、
それぞれの「数式イメージ」があるべき場所に収納されていくのです。

また、
その引き出し同士が
異種交配によって、
新しい引き出しも、またもや自動的に作成されていくようです。
その中には、

「割合」の引き出し
「方程式」の引き出し
「微分・積分」の引き出し

というように、
これから中学・高校で習う引き出しが作成されても
ちっとも不思議ではありません。

幼児期の間に、こうして着々とチュウショウ学校で学ぶ準備が
されていくはずだったのですが・・・。

最近、子どもの様子がどうも一変しているようです。

グショウ庭で遊ぶよりも、早期なんとかで、
いきなりチュウショウ学校でお勉強する子が増えてきています。

それは、チュウショウ学校では、目に見える形の効果を宣伝するからです。

「ご覧ください。こんなに記憶力がよくなりましたよ」
「九九がすらすら言えますね」
「右脳を鍛えると、超能力が開発されて・・・」
「幼稚園児なのに、ほら、この方程式を解けますよ」
「この方式で訓練すれば、逆立ちなんて簡単!」
などなど

「できる」「できる」「できる」・・・のオンパレードです。

だけど、私から見れば、それはすべて
動物の調教にしか見えません。

「うちのワンコちゃんはね、『お手』」も『お回り』も『ちんちん』もできるのよ」

みたいな感じにしか聞こえないのです。

グショウ庭で遊ぶことが人気がないのは、
目に見える形として効果が見えないからなのでしょうか。

子どもの頭の中で、実は、
こちらが想像する以上のことがドラマティックに起こっている。
ミラクル!と叫んでもいいぐらい、
ものすごい事が
起こっているのですが、

残念ながら、「お母さん、ぼく、こんなにすごくなったよ」と
その証拠を見せることができないのです。

ひっそりと
目立つことなく
しめやかに
行われるのが常ですから、
そっぽを向かれるのでしょうね。

だけど、グショウ庭で目一杯走り回って遊んだ子は
ご褒美があとからやってくることになります。

やがて、小学校に入り、算数の授業で
「たし算」を習います。

すると、

反応します。

グショウ庭で拾った宝物が、

「たし算」の引き出しに入っているさまざまな「数式イメージ」が

無意識の中で走馬燈のようにかけめぐり、

内なるイメージと

外なる知識の

「出会い」

劇的に行われます。

その瞬間、子どもの口から発せられます。

「わかった!!!」

その瞬間、彼は

かのヘレンケラー女史が幼い頃、
サリバン先生にポンプから流れ出てくる水を浴びせられ
手にW・A・T・E・Rと書かれ
物には名前があるとわかったその瞬間
(存在そのものとの出会い!)
味わった感動と

まさしく同じ感動を味わうのです。

これこそが、「真の理解」です。

このような理解が積み重なるから、
「学ぶ」ことは、本当は楽しいのです。

このような「学び」が現実に実践されていけば
日々の学校生活も楽しくなるだろうし、
不登校もいじめもぐーんと減ってくるだろうし
子どもの口から「勉強って、面白いね」という会話が
いろいろな所で聞かれることでしょう。

だけど、現場ではなかなかむずかしいところです。

学校でも、塾でも。

例えば、始めに行った4つの計算。

実際、現在のカリキュラムの中で、
このような計算の工夫の仕方を学校や塾で
系統立てて教えているわけではありません。

だけど、これからは計算の工夫も大切だ。
これもカリキュラムとして盛り込もう!
ということになり、習得すべき知識として加わるならば
おそらく次のような授業になることが予想されます。

例えば、①のような計算の工夫を説明するときに、

268+199は、
「268の中の1を右の199に移せば、計算しやすくなります。
だから、たし算の式の中に、足してきりのいい数字があれば、
その数字をとなりに移しましょう」
みたいな感じで説明して、

結局、「計算のくふう」と称して、次のようなポイントを黒板に大きく板書します。

 たし算 → 一方の数から隣の数に、数を移して、きりのいい数字にする
 ひき算 → どちらの数字にも、同じ数字を足す(または引く)
 かけ算 → 数を分解して、かけた答が10や100になるパターンをさがす
 わり算 → 2つの数字に、同じ数字ををかけたり割ったりして、計算しやすくする

色つきチョークで囲み、ノートに写させ、これを暗記しようねというふうに、授業が進められていきます。

公式化のはじまりです。

グショウ庭の宝物、つまり「数式のイメージ」を拾ったお子さんが
このような公式に頼らなくても、
頭の中のイメージを変形することによって、
式の変形が簡単にできることも
カリキュラムとして組み込まれると、

テストに出るからという理由で、
テストの点数を取らせるための授業が行われることになります。

理解させることは大変だから、
公式(または暗記事項)として丸暗記させようとなるわけです。

わかっていようがわかっていまいが、おかまいなく。

さ、これを覚えておくと便利だよと無理矢理暗記させられて、
テストをむかえます。

 652+299=

子どもは悩みます。

-あれえ、どちらの数字にも、同じ数字を足してよかったのは、
たし算だったけ、ひき算だったけ。

ひたすら悩んだあげく、どちらの数にも同じ数を足して

 653+300=953

としてしまい、×をもらう。

これが現在多くの(すべてではないですよ!)学校や塾の現場で行われている丸暗記授業の実体です。(たまたま算数で例にとっていますが、他の科目も同じようなものです)
子どもたちの口癖を観察してみてください。

「あれ、この問題をどう解くんだったっけ。忘れちゃった」

結局、一生懸命覚えようと努力したにもかかわらず
テストで悪い点を取ってしまい、

家庭では、

「『たし算のときは、一方の数から隣の数に、数を移して、
きりのいい数字にする』って、ここに書いているじゃない。
きちんと覚えていないからこんな点数取るんでしょ!
今度、こんな点取ったらおこづかい減額よ!!」
と叱られ、

学校や塾では

先生「基本事項をちゃんと覚えておけば、簡単な問題なのにな。
よし、こうなったら何度も復唱だ。
今日はこれを覚えるまで居残りだ。覚えた者から、帰ってよし。
じゃ、先生のあとについて、復唱するんだぞ!
たし算のときは、一方の数から隣の数に、
数を移して、きりのいい数字にする!
せえの、はい!」

生徒「たし算のときは、一方の数から隣の数に、数を移して、きりのいい数字にする

先生「元気がな~い!もいっかあ~い

生徒「(やけくそになって)たし算のときは、一方の数から隣の数に、数を移して、きりのいい数字にする!!

先生「そうそ、その調子~い。もいっかあ~い

生徒「たし算のときは、・・・

みたいな状況が続けば、

だれかて

勉強いやになりまっせ。

いや、ほんまの話。

この記事は旧ブログに書いた記事(2005年)を編集したものです。

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